014 地方のIT業界事情

私が嫁ターン移住して入ったのは地場のIT企業でした。ITというと都会でキラキラしたベンチャー企業のイメージがありますが、地方には地方のITの世界がありました。ここでは私が体験した地方のIT業界事情について書いていきたいと思います。

仕事の中心は自治体関連業務

ITというとGoogleやYahoo!、楽天のようなWebサービス、あるいはNECや富士通といった大企業のITシステム開発事業を思い浮かべます。そういった世界しか想像できないほどITの世界に疎かった管理人。そんな管理人がよくわからないまま入ったのが地方ITの世界でした。

私が転職した会社では、地元自治体の業務系システム開発や保守・運用を請け負っていました。考えれば当たり前なのですが、自治体とシステムは切っても切れないものです。住民の戸籍や住民税、福祉情報、水道料金などさまざまな住民サービスを提供している自治体。もちろん紙で管理されているわけはなく、コンピュータを使ってシステム管理されているのです。

考えれば普通にわかることではあるのですが、そんなこと考えたこともなかったので、未経験の人間にとっては目から鱗でした。そういった自治体が普段の業務で使っているシステム。それは自治体が内製しているわけではなく、その開発や保守管理を外部業者に委託しているのです。そして、そんな仕事を請け負っているのが地方のIT企業となります。

もちろん、地方のIT企業が自治体の仕事ばかりやっているわけではありません。例えば、グループウェアで有名なサイボウズはもともと愛媛県が創業の地ですし、一太郎で有名なジャストシステムは徳島県の会社です。このように地方にも民間や個人向けにサービスや商品開発している大きなIT企業はあり、有名なIT企業は都会だけにしかあるわけではありません

しかし、日本全体を考えると地方でIT企業が成り立つためには自治体のシステム開発業務は大きな柱となります。恐らく、どの県にも自治体の仕事をメインに請け負うIT企業があると思います。

地方IT業界の成り立ち

なぜどの県にもそういったIT企業があるのかというとそれは日本の自治体業務のIT化の歴史に関連があると思っています。コンピュータのなかった時代は、もちろん世の中の仕事は全て紙で行われていました。当然ですが、自治体でも明治時代など昔の戸籍は紙で残っています。そういった紙で行われていた自治体業務がコンピュータ化していったときに、各地方で自治体業務のシステム開発を担う会社が出来てきたのです。

よくあるのは地場の有力な企業グループが情報系子会社を作るパターンです。地方のテレビ局や新聞社などのメディア企業グループの情報子会社だったり、その地域で有力な商社グループの子会社だったり。あるいは、自治体が第三セクター的に自治体システムを担う会社を作ったところもありました。そのような成り立ちの会社が日本各地にあり、それが今でも地方自治体のITシステムを支えているのです。

ですので、どんな地方に行っても、「ITの仕事」は必ずあります。もちろん、自治体以外の仕事もあります。しかし、地方の場合、民間向けのITの仕事より圧倒的に自治体向けの仕事が多いです。嫁ターン移住する際の転職先として、自治体向けのIT企業がある、ということは転職の選択肢として知っておいて損はないと思います。

自治体関連のITシステム

自治体関連のITシステムとはどういうものかというと、住民情報などのデータベースをもとに税や水道料金の計算をしたり、生活保護など福祉サービスを提供する対象者を管理するシステムとなります。都会で最新の技術トレンドを追いかける華やかなIT業界とは真逆で、技術的に枯れたプログラミング言語を使うことが多いと思います。

私は営業なので技術的なことはあまり詳しくはありませんが、それでも20代の若いプログラマーがcobolという「いにしえ」のプログラミング言語を勉強していて、将来大丈夫かなと不安に思うこともありました。たびたび障害が起きる銀行のシステムもcobolで作られていると言われてますよね。やはり、最近パッと出てきた業界ではなく、金融や公共といった昔からあるIT領域ではそういった言語が今でも現役で使われているのです。

そういった意味で技術的に新しい言語をどんどん勉強したいという野心のある若い技術者が都会のIT企業に転職していった例もあります。ただ、地元でコツコツと安定した仕事をしたいという志向の方にとっては良い職場だと思います。

そして、自治体系SEとして重要なのはプログラミング言語を書くことより、いかに業務を知っているか、となります(もちろんプログラミング言語が書けることも大事ですが)。税や福祉などは制度が毎年のように変わりますし、それこそ国会での政治の影響で突然、住民税非課税世帯への給付金の支給が決まったり、減税政策が行われたりします。こういった急な制度変更は、ITシステムにもろに影響します。システム改修が発生するのです。自治体はそういったシステム改修を地元のIT企業に発注し、地元IT企業はそういった仕事で売上を上げているのです。

そのため、制度がどのように変わり、それがプログラムとしてどの部分に影響するのか、どの部分を改修する必要があり、それの工数がどれくらいで、見積金額がいくらになるのか。こういったことを見落としなく網羅し、プロジェクト全体を管理できるSEが自治体向けのIT企業では優秀なSEとなります。

次回は、営業的な目線で地方IT企業に入ってよかったことを書いていきたいと思います。


最後までお読みいただきありがとうございました。

 管理人のプロフィール りも夫のプロフィール画像
管理人:りも夫(りもおと)
東京都出身、北陸在住のアラフォー営業マン。
20代後半で当時住んでいた大阪から嫁の地元である北陸地方に嫁ターン移住し、10年以上経過。
新卒で入った半導体系メーカーから嫁の地元のIT企業に転職して約9年働いた後、外資系IT企業に転職し、現在では年収1000万円以上を達成。
地方で嫁+子供3人と生活を楽しんでいます。
Xやってます → @remote_yometurn
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地方での仕事とキャリア