015 地方で自治体IT営業することのメリット

前回は、地方におけるIT業界が自治体が主要な仕事であることを書きました。今回は、管理人が個人的に感じた自治体IT営業のメリット、特に地方でそれをやるメリットを書いていきたいと思います。

自治体の商慣行に詳しくなれる

自治体営業という領域は、一般的な民間営業や消費者向け営業と違い少し特殊な業界といえると思います。もちろんどの業種・業界もそれぞれに特徴がありますが、自治体もまたかなり特殊な世界と思っています。

まず、独特な予算制度です。自治体は前年度に予算を申請し、その課内査定・財政査定・首長査定等を経て、議会へ提出され、議会承認があって初めて当初予算として計上されます。また、当初予算以外にも、6月、9月、12月、3月と年4回の定例議会の中で補正予算で予算が付く場合もあります。ここで議会の予算承認がないと基本的には調達行為がかけられません(首長による専決処分などの例外はありますが)。中小企業のように「社長の鶴の一声」で案件が決まる、といったことはまずありません

また、調達制度も入札やプロポーザル、随意契約などいくつかの種類があり、それぞれの調達方法によって調達プロセスが変わってきます。つまり自分が営業している案件がどの調達方法になるかによって営業戦略が変わってくるのです。

他にも細かいことを挙げればキリがありませんが、自治体営業は法律や制度なども絡んでくるため、営業に慣れるために最初は苦労します。ただやっていくうちに徐々に慣れてきますし、役所の人の考え方や組織の論理などもわかってきます。そうすれば、公務員の方の考えを先回りした提案など自治体営業らしい振る舞いが出来るようになってきます

自治体業務に詳しくなれる

また、自治体IT営業、特に業務システムの営業をしていくと自治体の業務や制度に詳しくなります。自治体は基本的に法律や条例等に則って住民サービスを提供します。そこで使うシステムの営業をしているとよくあるのはシステム改修案件です。

これは制度変更に伴いシステム改修の依頼がITベンダーに来る、というものなのですが、必ずといっていいほど見積説明を求められます。この際に今の制度がこうで、次の制度がこう変わる、だからシステム上この部分が対応できないため、このようにシステム改修します、という説明が出来ないと自治体IT営業は務まりません。

前回の記事で自治体業務に詳しいSEが優秀なSEと書きましたが、営業も社内でそういったSEとやり取りしているうちに自治体業務に詳しくなっていきます。なんなら省庁から自治体に送られる書面や省庁のHPに公開される情報など制度関連のドキュメントを読み込む必要もあります

業務でそういった領域に接することで自治体業務に詳しくなり、自治体領域のスペシャリストとしてのキャリアを構築できるのです。

また、意外とこの知識はプライベートでも役に立ちます。国会での政治動向が制度改正、すなわちシステム改修に直結するため、普段から政治動向が自然と気になってきます。プライベートでそういった国会や政治動向の話題になった時に背景知識が入っているので、スムーズに自分の意見を言えるようになります。

また、給付金や子育て支援など実際に自分の家庭にも関わってくる情報もいち早く入ってきます。申請時期や申請する時の注意点なども業務で分かるようになるので、実際に一住民として公的サービスを利用するときに役立つこともあります。

裁量権が大きい

さて、こういった少し特殊な自治体領域を、特に「地方」でやることのメリットを書いていきます。もちろん都会にも自治体はあるので、こういった仕事を都会でやることも可能です。では、地方と都会の決定的な違いはなにかというと、地方では都会と比べて圧倒的にITベンダーの規模が小さい、ということです。

地方だと都会の大企業と比べて圧倒的に組織・人数が少なくなります。その中で自分の担当を持って仕事をしていくのですが、少人数ゆえに何でも自分でやらざるをえません。営業外回り、提案資料作成、提案商材の選定、見積作成、提案書の作成、お客様への説明、入札書類作成、入札、プレゼン、契約書の作成、納品書・請求書の作成、入金確認など・・・・こういった一連の営業プロセスを一人で回せるようになると営業としての戦闘力も上がっていきます

都会の大企業に所属する営業の場合、地方ほど裁量権をもって仕事を行うことは難しいと思います。特に提案内容については、会社でキチッとした提案テンプレートが決まっているところが多く、自分で工夫する余地は少ないと思います。しかし、地方でIT営業をするとその辺まで自分の裁量で決めることができます(やらざるをえません)。

私も特にITインフラ系の提案(サーバ、ストレージやネットワーク機器)ではかなり自分の裁量で進めていました。これはこれでかなり大変でしたが。。複数のベンダーを呼んで説明を聞き、メリット/デメリットを把握して、製品選定をしたうえで、提案書に落とし込んでいき、価格交渉をしつつ、自社の利益を確保しながら、お客様へ見積提出やプレゼン提案をする。普通の会社ならSEに任せてしまうところも自分でやっていたので、気づいたらSE的な知識も広く浅くわかるようになってきました

今振り返るとかなりの業務量で、それこそ今の若者からはブラックと言われてしまうかもしれませんが、それでも地方だからこそ一人の人間にここまで裁量を持たせてもらって自由に仕事が出来たと思います。この力は外資ITに転職した今でももかなり役に立っています

まだまだ書きたいこともあるのですが、分量が多くなってきたので、一旦ここで終わりたいと思います。それでは、また。


最後までお読みいただきありがとうございました。

 管理人のプロフィール りも夫のプロフィール画像
管理人:りも夫(りもおと)
東京都出身、北陸在住のアラフォー営業マン。
20代後半で当時住んでいた大阪から嫁の地元である北陸地方に嫁ターン移住し、10年以上経過。
新卒で入った半導体系メーカーから嫁の地元のIT企業に転職して約9年働いた後、外資系IT企業に転職し、現在では年収1000万円以上を達成。
地方で嫁+子供3人と生活を楽しんでいます。
Xやってます → @remote_yometurn
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